天気予報が告げていた通りの晴天。
海の向こう側に建ち並ぶ高層ビルは、真っ青に染められていた。
政宗「……さっきから、熱心に外見てるな」
あなた「うん。どの建物も反射で青く光ってて、綺麗だから」
政宗「ああ、そういうことか。なら……」
政宗はくすりと笑って、車の窓を開ける。
潮の香りをまとった風が、私の鼻先をそっとくすぐった。
政宗「こうして直接見た方が、もっといいだろ?」
あなた「わ……本当だ」
完璧に磨かれているのか、ビルには真っ白な雲や波のきらめきが見事に溶け込んでいる。
そんな景色に心を奪われていると、隣から小さな笑い声が聞こえてきた。
(いいな、この時間)
何気なく交わす言葉が、昼下がりの穏やかなひとときに優しく溶けていく。
幸福感に浸りながら、私は視線を移し、慣れた手つきで車を走らせる政宗の姿を眺めた。
政宗「……へえ、今度は俺か」
あなた「え?」
政宗「お前がじっとそうしてる時は大体、俺が好きでたまらないって可愛い顔をしてる時だ」
政宗「その顔は、見てやらねえとな」
信号が赤に変わったのか、政宗は静かにブレーキを踏むと、私と視線を重ねる。
政宗「ほら、当たりだ」
あなた「! いきなりこっちを向くのはずるいよ……!」
政宗「ずるくないだろ。俺の運がいいってだけだ」
頬を熱くしながら異議を唱えると、私を映した深い青色の瞳が愉しげに細められた。
あなた「……そういえば、政宗もお揃いだね」
政宗「何がだ?」
あなた「目の色。空や海みたいで、すごく綺麗」
政宗「そうか。……でも、お前の色の方が綺麗だと思うぞ」
政宗「今日が良く晴れた日で良かったな」
あなた「え……どういうこと?」
政宗は私の質問には答えず、まぶたに掠めるようなキスを落として、そのまま緩やかに車を発進させる。
突然のことに、私は鼓動が速くなった胸に手を当てながら首を傾げた。
(同じって、何が……)
(……あ)
サイドミラー越しに、今度は自分と目が合う。
(……本当だ。政宗と同じ色)
大好きな『恋人』と共に過ごす、大切な一日。
それはどこまでも澄み渡る彼の色に彩られ、甘く私の胸に刻まれていった――