
上杉謙信
「け、謙信サマ!」
……あ、やばい。
完全に声が裏返った。
でもしょうがない。
仕事が終わってすぐ、
謙信様を探すために正座しっぱ
なしで痺れた足で城の中を駆け
回っていたのだ。
(あ~、深呼吸して声かけるん
だった)
(私の馬鹿! )
でも、謙信様は刀を振っていた
手を止めてこちらに振り向く。
「お前か。どうした?」
良かった…。
さっきの裏声は、気にしてない
らしい。
ラッキー!なんて思いながら私
も答える。
「あの、今日が何の日か知って
ますか?」
「……ああ、真実とは異なるこ
とを言う日か」
「はい!だから……」
言いかけて、止まる。
本当は
『大嫌い』
って言おうとしてたけど…。
……そんなの、言えない。
でも……
「……わかっている」
「え……?」
「お前の言おうとしていること
はお見通しだ」
「だが、俺はいつもお前の真っ
直ぐな想いを受け止めたい」
「!!」
何それ…。
謙信様、ずる過ぎませんか?
あーもう。
そんなこと言われたら…。
「……大好きです!!」