
ヨナ=クレメンス
最近ヨナは、なんだか機嫌が悪
い。
寒い冬が終わって、
すっかり暖かくなって、
外には綺麗な花が咲き始めてい
るのに……
「ヨナ、どうかしたの?」
「別に、どうもしないけど?」
「嘘。だってヨナ、最近何か
怒ってない?」
私が見抜いてるとは思っていな
かったのか、ヨナはびっくりし
た顔をする。
「……怒ってたわけじゃない
よ。ただ、春が嫌だなって思っ
てただけ」
「春が嫌いなの?どうして?」
私は思わず、ぱちぱちと目を瞬
いた。
「春ってあったかいし、なんだ
か幸せな気分にならない?」
そう言うと、ヨナは拗ねたみた
いに唇を尖らせる。
「だって暖かくなったら、君と
くっつく口実がなくなっちゃう
じゃないか」
「え……」
ほっぺたを薔薇のように染めた
ヨナが、愛しくて、触れたく
て、堪らない。
私は両手を広げて、ぎゅっ……
とヨナを抱きしめた。
「口実なんて、なくても大丈夫
だよ。春になっても、夏になっ
ても、ずっとこうしてくっつい
ていよう」
「……本当?」
「うん!」
ヨナが、私の耳に口をよせて
……
「大好き」と囁く。
私たちはぽかぽかと暖かい春の
陽気の中、いつまでも抱きしめ
合っていた…………。