
ヴラド
ヴラドと付き合って、初めての
春が訪れた。
朝、目が覚めるとヴラドからの
着信。
「ねえ、桜が咲くあの丘におい
で。俺はここで君を待っている
から」
「え、ヴラド。ちょっと!」
「――……ツーツーツー」
いつも強引だな……そう思うの
に。
気付いたら……。
あなたに逢いたくて走り出して
いた。
ピンク色の桜が空気を染める場
所。
そこで、あなたはひとり、佇ん
でいた。
……ねえ、ヴラド。
あなたを見ていると、たまに自
分の気持ちがわからなくなる
の。
大好きだなっていう気持ちと一
緒にね、
切ないっていう気持ちが溢れて
くるんだ。
あなたが、いつかどこかに消え
ちゃいそうで。
桜みたいに散ってしまいそう
で。
だけど、そんなことを言ったら
あなたを困らせちゃうから、
私はいつもみたいに笑って駆け
寄って……。
「ヴラド、お待たせ」
「……ああ、よかった。来てく
れたんだ」
そう言って笑うと、あなたは私
を腕の中に閉じ込めて
「ありがとう」って囁いた。
ねえ、消えてしまわないで。
私の桜みたいな恋人。